World Chronicle / Battle Record 059

ベリルVSシェイド

ベリルベリル・ゴルゴン
VS
シェイド

アル・イルミンスール連邦とエル・ユグドラシル連邦の国境付近では、争いが激化の一途をたどっていた。 中でも南部の国境地帯は、 アル・イルミンスール連邦の『炎の将』イグニスが進軍を進めるエリアであり、 いつしか『イグニスゾーン』と呼ばれるほどの熾烈な戦場と化していた。 当然、そ…

Compiled Battle Record

導入と決着

戦闘記録 059

導入

アル・イルミンスール連邦とエル・ユグドラシル連邦の国境付近では、争いが激化の一途をたどっていた。
中でも南部の国境地帯は、
アル・イルミンスール連邦の『炎の将』イグニスが進軍を進めるエリアであり、
いつしか『イグニスゾーン』と呼ばれるほどの熾烈な戦場と化していた。
当然、そのエリアではエル・ユグドラシル連邦の部隊も暗躍している。

ドオオオォン……!

突如、激しい爆発音が響き渡った。イグニス部隊の小隊が何者かに奇襲を受けたのだ。
爆風に動揺する部隊へ向けて、鋭い槍が容赦なく投げつけられる。
「ぐあっ……!」
槍が一人の兵に深く突き刺さる。
「カイン! ……くそおおおおお! ゴルゴン部隊か!」

虚柱殲滅隊(きょちゅうせんめつたい)、通称・ゴルゴン隊は、あらかじめ大量の地雷を仕掛けていたのだ。
地雷を踏ませて陣形を崩し、動揺したところを遠距離から一人ずつ的にしていく
——それがゴルゴン隊の常套手段であった。
「くっ。大丈夫か、セイン! ガッシュ! くそっ、お前たち怯むな!」

イグニス部隊は周囲に散らばるゴルゴン隊へ向かって猛然と突進していった。
あちこちで刃が交わる激しい火花が散る。
すでに何年も前に廃墟と化した灰色の街を、人間の泥沼の争いが包み込んでいく。

ザシュッ!
「イグニス部隊を舐めるな!」
「お見事です、ジェルボール軍曹!」
「ああ! お前たちも油断す……ぐあああああああっ!?」

ジェルボール軍曹がその場に崩れ落ちた。
「へへへ。スクラーップ、あーんどスクラーップ! お前ら全員、ここで土に埋もれて肥料になれや~!
ひひひ、あ~あ、この辺りは廃墟だから花も咲かねぇか。お前ら無駄死に~、お疲れさ~ん!」

返り血を浴びながら、エル・ユグドラシル連邦のゴルゴン隊隊長・ベリルが、その場で気味の悪い踊りを踊り始めた。
「べ、ベリル……! 貴様ぁ、軍曹を……! 許さん!」
「ほら、こいや」
「チェストォォ!」

ズバッ!
「あ……」
「ひひひ、準備運動にもなりゃしないわ……ひひひ。さーて」

ベリルは自身の首だけを90度曲げ、残された部隊を舐めるように見つめた。
「つぎは……君たちかな? スクラーップ!」
「うわぁぁぁ!」
勢いに任せて一人の兵士がベリルに突撃する。
「はい、一匹」
ザシュッ!
「あ……」
「は、早い……!」
その一部始終を目撃した隊員たちは、完全に戦意を喪失した。

コッコッコッ……

ゆっくりと足音を立てて近づいてくるベリルは、首を真横に傾けたまま、呪いをかけるように嘲笑う。
「炎の将はどこ~?」
「うわ、うわぁぁぁ!」

一人の兵士がたまらず背を向けて逃げ出すと、ベリルは巨大な剣を振り回しながら追いたてた。
「ひひひひひ~!」

あっという間に追いつき、兵士の背中に剣を振り下ろそうとした、その時——

キンッ……!

ベリルの振り下ろした剣が、不可視の衝撃で止められた。
「あ?」
「シェイド准将……!」

ベリルと兵士の間に、目を閉じた銀髪の女性騎士が静かに降り立っていた。
「あなた達では手に負えません。ここは私が引き受けます。
……ただ、敵に背を見せたことを恥と思いなさい。自害する機会を与えます。あとは自分次第です」

兵士は絶望と恐怖のあまり、言葉を失ってその場に固まった。
「イグニス部隊であるならば……その答えを出しなさい」
「なんだぁ~、てめぇは?」
「私は炎の将イグニスの腹心、シェイド。貴様を捕縛し、我が将のもとへと連行する」
「ひひひひ! ムカつくなぁ。まだ炎の将は出てこねぇのか? お高く留まりやがって、なぁ?」
「無礼者。言葉を慎みなさい。貴様など我が将の炎によって、
血も脂も骨でさえも塵となる運命。これまで犠牲となった我が隊員の無念は、貴様の火葬をもって晴らします」
「うへッ! だったらお前の首を獲って、お高い将軍様に送りつけてやるよ。『代わりにこれを燃やしてください』ってな!」
「……頭が悪いのですね」
「あ?」
「ここで私に跪かないことが、何よりの愚かさの証拠です」
「はぁ?」
「お前は私に手も足も出せないまま……ここで敗北する」

カアアアアアアアアッ!

シェイドの周囲に鋭いオーラが吹き荒れると同時に、彼女の両目がカッと開かれた。
そこにあったのは、燃えるように鮮やかな赤い瞳。
「ベリル・ゴルゴン。お前は全身を切り刻んだ後、イグニス様への生贄とします」

シェイドが剣を構えると、その刃の周りに白い粉が美しく舞い散った。
それを見たベリルは、顔を真っ赤にして興奮に身を震わせる。
「うへへ! リベンジしてくる奴の顔って、なんでこんなに可愛いんだろ!
もっともっとお前らの仲間を壊したら、もっともっとこういう奴らが私をそんな目で見てくれるのかなぁ!?
かなぁ!? かなぁぁぁぁぁっ!?」

ベリルは舌を突き出し、よだれを垂らしながら巨大剣を振り回した。
「イグニス様の仰る通り……生かす価値もないクズ。……終わらせましょう」
「スクラーップゥ!!!」

決着

「スクラップにしてやるぜぇ~」
ベリルの突進を仁王立ちでシェイドは迎え撃った。
ベリルの横一線の攻撃を跳び上がると同時に、シェイドはベリルの顔を蹴り上げた。
「げへっ!」
ベリルは後ずさり、顔をさすった。
「テメェ……ムカつくぜ。スクラップにしてやる」
シェイドは冷静に言った。
「しないのか?」
「は?」
「お前にその力があるなら、もうとっくに出来ているだろう」
ピキ
ベリルの顔に血管が浮かんだ。
「絶対に後悔させてやる」

ベリルが攻撃を仕掛けるも、シェイドはまるでその場から消えるような動きで見切る。
まるで灰だ。まさに灰の将にふさわしい動き。
ベリルは巨大な剣を振るが当たらない。
「隙だらけです」
ザシュッ!
「うげっ! 痛てぇな! このっ」
ベリルは剣を振り回すが、またしても当たらない。
「うぜぇ……」
ベリルは悪態をついた。
シェイドは冷静な表情で言い放った。
「あなたに私は倒せません」
ベリルはまたしてもムカついた表情を浮かべたが、落ち着きを取り戻して笑った。
「へへ。そうかな~? あたしはもう気づいている……」
シェイドは訝しげな表情をした後、剣を構えてベリル目掛けて突進した。
変幻自在の動き。
「なんだこりゃ」
「受けてみなさい!」
ヒュオオオオオオオオオオオオオオッ!
風が通るような緩やかな動きで、ベリルを何度も突いた。
トトトトトトトトトォ…
目にも見えない突きがベリルを捉えた。
「ぎええええええ!」
どさっ
ベリルはその場にしりもちをついた。
シェイドは目をつむりながら言った。
「降参して大人しく炎の将のもとに出向き、裁きの炎を受けなさい……」
ベリルはきょとんとした顔をした後、笑った。
「にひぃ……う……うへへへ」
「?……恐怖のあまりおかしくなったのですか?」
「うひゃひゃひゃひゃあっ!」
ベリルはシェイド目掛けて横一線に振り抜いた。
渾身の一撃がシェイドの体を捉えた。
「きゃあっ!」
ズザアアッ! ドサッ!
「う……あ……がはっ」
シェイドはうずくまりながら体勢を立て直そうとしている。
ベリルはゆっくりと近づいた。
「うへ……軽い……軽い……
すごい動きだけどね……超軽い……」
ベリルはシェイド目掛けて剣を振った。
ザンッ!
シェイドは急いで体勢を立て直し、その場から距離を取った。
ベリルの剣は地面に深く突き刺さっている。
シェイドの表情から余裕が消えた。
「うへへ!」
ベリルはさらにシェイド目掛けて攻撃を仕掛けた。
シェイドの華麗な動きは、先ほどのベリルの一撃で鈍くなっていた。
「うへ! うへ! うへ!」
ガキン! ガキン! ガキン!
重い。
ベリルの一撃一撃がシェイドの体に響く。
「うっ……くっ……」
シェイドに苦悶の表情が浮かぶ。
「うへ! その辺の! 雑魚には! 通用したかもしれないが!
ユグドラシルの! 将格相手には! 軽い軽い軽ーい!!!」
ベリルの一撃はシェイドの剣を吹き飛ばした。
「あっ!」
「チャーンス!」
ベリルの一撃が振り下ろされた。
間一髪……
シェイドの服が縦に切断される。
服の下から血がにじむ。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
シェイドは混乱するほど狼狽していた。
(なんて凶悪な力……イグニス様に報告を……)
シェイドは正面を向いたまま後ろに大きく飛びずさった。
「うへ。何をしやがんだ?」
ベリルはその場で腰を落とし、防御に構えた。
その瞬間、シェイドは背中を向けて退却した。
「……!?!?」
「うへ!……逃がすか!」
ベリルはシェイドの背中を追いかけた。
シェイドは部下も見ずに走った。
ベリルも追いかけるが、シェイドのほうが速い。
「くそが! 逃げられるのか! スクラァップ!」
シェイドは後ろを振り返り、ベリルとの距離が開くのを確認した。
一瞬、安堵が顔をのぞかせた。
その瞬間――

シュバッ!

「がっ……あああああああああああああっ!」
シェイドは全身に感じたことのない衝撃を受けた。
「ああああああああああああ!……あ」
ズサッ
その場に膝をついた。
「はぁ……はぁ……一体何が……」
気配を感じた。
見上げると、そこに武装した少女が立っていた。
「戦士の風上にも置けない。消えて」
少女の剣の先から青い電撃が走った。
「ああああああああああっ……あっ……あっ!」
少女はシェイドの頭を掴んで上半身を持ち上げた。
「嫌い」
少女の手を伝わり、地獄の雷鳴がシェイドに落ちる。
「あっ……やっ……ああああっ!」
追いついたベリルが声をかけた。
「うへ。なんだよジャスパー。お前来てたのかよ」
「いやあああっ……がああっ……ああああっ」
「ベリル……これ誰?」
「炎の将の部下だよ。イグニスの右腕だって。うへ」
ジャスパーから放たれる電撃が強くなった。
「あああああっ……やめてっ……いやあああああああっ!」
「イグニス……。嫌い」
「うへ。あたしもさ」
ジャスパーは両手で電流を流しながらシェイドの頭を掴んで正面から覗き込んだ。
我を忘れて叫び続けるシェイドの顔を無表情で見つめている。
「ああああああああああああああああああ……」
「イグニスの右腕…これが?」
「うへっ」
ドサッ
ジャスパーは放り投げるようにシェイドを地面に落とした。
同時に手で合図をすると、ジャスパーの部下がシェイドを連れていく。
「うっ……あっ……」
「うへ。どうすんだ? あたしの獲物だぞ」
「貴方だと〇しちゃう。まだ使えるから私が預かる」
「あん? そんなの許可してないぞ?」
「だったら……戦って決める?」
「うへっ。疲れたから嫌だ。今からお前のところ行く」
「……いいよ」