World Chronicle / Battle Record 050

ウラvsエラ

ウラウラ・エインズワース
VS
エラエラ・エインズワース

「まだまだぁ~」 マリーは足を気にしながら剣と盾を構えて臨戦態勢に入った。 「ふふふ・・・憎らしい女ね・・・。 どうせなら苦しめて苦しめて殺してあげる・・・」 エラは勢いよくマリーに飛び掛かった。 「怖いっ!」 エラの攻撃のほうにマリーは盾を突きだした。 エラは力を込めて盾…

Compiled Battle Record

導入と決着

戦闘記録 050

導入

「まだまだぁ~」
マリーは足を気にしながら剣と盾を構えて臨戦態勢に入った。
「ふふふ・・・憎らしい女ね・・・。
どうせなら苦しめて苦しめて殺してあげる・・・」
エラは勢いよくマリーに飛び掛かった。
「怖いっ!」
エラの攻撃のほうにマリーは盾を突きだした。
エラは力を込めて盾めがけて剣を振り下ろした。
ガキン!
マリーの盾は確実にエラの攻撃を防いでいたが
エラは力で盾ごと押し付けた。
「うう・・・」
マリーの足の付け根から血が流れる。
「形成は逆転のようね!さっきほど完全な防御ではないわ!
はああっ!」
エラは盾ごとマリーを吹き飛ばすほどに剣を振り切った。
マリーはその場に腰を付いた。
「いたっ」
エラは両手で剣を持ち変え、上からマリーを突き刺そうとした。
「さよなら」
「!」
マリーはその場からうつ伏せのほふく前進の体制でエラから距離を取った。
「ぜぇ・・・ぜぇ・・・」
マリーの顔に焦りの表情が浮かんだ。
「ふふふ・・・いい逃げっぷりね・・・まだまだ・・・」
エラがもう一度マリーめがけて攻撃を仕掛けようとした瞬間、
声が鳴り響いた。
「マリーさん!」
その声を聴いた時、エラの表情が一瞬、無表情になった。
「・・・え?」
マリーの眼から涙がぶわっと流れ出した。
「ウラちゃん!ウラちゃん!ウラちゃ~ん!」
マリーは何度も名前を呼んだ。
その声に呼応するようにウラは素早い動きでマリーの目の前まで走りつけた。
マリーの横でしゃがみ込みウラはマリーの太ももを手で押さえた。
「マリーさん・・・ごめんなさい」
ウラの聞こえるか聞こえないかのつぶやきにマリーは反応した。
「ウラちゃん・・・ありがとう」
ウラは俯きながら悔しそうに言った。
「予想はしていたけど・・・現実になって欲しくなかった・・・」
そういうとウラは正面のエラをめがけて怒りの表情を向けた。
その表情を見てエラは恍惚の表情を見せた。
「ウラ・・・ああ・・・ウラ!ウラなのね!
・・・私のかわいい妹・・・ウラ・・・」
「エラ姉さん・・・」
「ウラちゃん・・・ダメ」
マリーは何かを察したかのように言葉を発した。
ウラはマリーの表情を見つめた後に呟いた。
「大丈夫ですよ・・・」
ウラはマリーの太ももから手を離すとゆっくりと立ち上がった。

決着

「あはははは! その動きのキレ、その踏み込み……やっぱり私の最高傑作ね、ウラ!」
エラのうれしそうな叫び声と一緒に、剣がぶつかり合う高い音が村中に響き渡った。エラの剣はヘビのように動き、最短距離でウラの急所を狙う。対するウラは、しっかりとした剣さばきでそれを受け流し、重い一撃を打ち返した。
石畳が砕け、火花が散る。二人の動きは、普通の人間には追えないほど速くて重い。
「ねえ、覚えてる? あの村を焼いた夜、返り血を浴びて笑った私を、貴方は『綺麗だ』って言ったじゃない!」
エラは激しく攻撃しながら、うっとりとした表情で語りかける。
「あの時、貴方の目には私しか映っていなかった。あの楽しさに満ちた地獄へ戻りましょう? 私がまた、貴方の心を染めてあげる!」
エラの視線は、もはや戦いではなく、愛しい相手をなめるように見つめる、ねっとりとした熱を帯びていた。
「ウラちゃん……」
地面に座り込み、傷ついた足を押さえながら、マリーは祈るように二人を見つめていた。ウラの背中からは、前にお店で楽しく話した時のような温かさは消え、ただただ苦しいほどの決意だけが伝わってくる。
戦いは数十分に及んだ。天才的なエラの予測できない剣の動きと、それを必死に防ぐウラの強い意志。
「はぁっ……はぁっ……!」
互いの剣が相手ののど元で止まり、あるいは肩を浅く切り裂く。二人の実力は互角だった。その時、ウラが一瞬だけマリーの方へ目を向けた。
「ウラ! 私だけを見てよ!」
その瞬間、エラの剣がウラの脇腹を深く突き刺した。
「っ!……」
ウラの顔が苦痛でゆがむ。
「あはは! ウラ、その表情も大好きよ! ……やっぱり、洗脳されてるのかしら。大事な戦いの最中にあんな娘の方を見るなんて。貴方は変わってしまったわ。さあ、一度気絶させて連れて帰って……え?」
エラの剣が抜けない。ウラの鋼のような筋肉が、刃をくい止めていた。
「姉さん……私は……姉さんの作品じゃない!」
ウラの渾身の蹴りが、無防備なエラの頭の横を捉えた。
ガッ、と重い音が響き、エラは石のように吹き飛ぶ。しばらく仰向けに倒れていた彼女だったが、やがて耳を押さえながら、ふらふらと立ち上がった。
「どうして……?」
ウラは怒りに燃える瞳でエラを見つめている。肩で息をしながら、エラが顔をゆがめた。
「どうして、私を殺すような目で見るの? 貴方の居場所は私の隣なのよ!」
「……姉さん。居場所は、私が決めるよ」
ウラの静かな、けれど拒絶に満ちた言葉。エラはその現実を認められず、頭を抱えて狂ったように笑った。
「違う! 貴方は騙されているだけ! その太った女が、貴方に毒を盛ったのよ! 認めない……認めないわよ、そんなこと!」
「姉さん……もう帰ってください。実の姉を、この手で傷つけたくない……」
その言葉を聞いて、エラは初めて純粋な――狂気の笑顔を見せた。
「あはは! あなたが私を殺すことで元に戻るなら、喜んでこの命をあげるわ! ……でもダメ。今のあなたじゃ、私を殺せない」
「ダメだよ! ウラちゃん!」
マリーの声に、エラは恐ろしい声で怒鳴りつけた。
「うるさぁぁぁぁい! 血のつながりを邪魔するな!」
マリーが怯んだ隙に、ウラは静かに腰を落とし、エラをにらみつけて力を溜めた。エラもそれに合わせるように、不気味な笑みを浮かべて剣を構える。
「うふふ……ウラ、一瞬痛いけど我慢してね。連れて帰って、たっぷり教育してあげるから……」
エラは悪魔のような笑顔でウラに飛びかかった。ウラもまた、死ぬ気の表情でエラの攻撃に応えた。
エラの姿がかき消えた。超スピードの踏み込みから放たれたのは、心臓を一点に貫こうとする鋭い突き。対するウラは、避けることをやめた。彼は最短距離でエラののど元へ向けて、自分の剣を突き出す。
「相打ち覚悟かしらねっ!」
エラが楽しそうに叫ぶ。鈍い音が二つ、同時に響いた。エラの剣はウラの右肩を激しく切りつけた。ウラの頬には飛び散った血がついている。だが、ウラの剣もまた、エラの左脇を深くえぐっていた。
「が、は……っ」
エラの口から血がこぼれる。すぐ近くで視線がぶつかる。
「ウラ……綺麗よぉ」
エラの目には驚きと、それ以上に狂おしいほどの愛情が混ざり合っていた。エラとウラは二人同時に後ろに倒れ込んだ。
ウラは膝をついて、なんとか上半身を持ち上げた。エラは仰向けで大の字になりながら、不気味な笑い声を上げている。
「あはは……うふふふ……いいわぁ……ウラ……」
その瞬間、エラは体をエビのように反らせ、その反動で両足を地面に叩きつけた。その勢いのまま、一気に数メートル離れた場所へ飛び移った。ウラの表情がこわばる。
(まずい……ダメージが大きい……)
エラは不気味な顔で笑った。
「ここで終わらせるのはもったいないわ……ウラ……。今度は貴方がお世話になっているお城にお邪魔したいわね」
その言葉を聞いて、ウラは鬼のような形相でエラをにらみつけた。
「姉さん!……」
「ふふふ……その顔も好きよ。……またね、ウラ」
エラは消えるようにその場からいなくなった。
静寂が戻った廃墟に、ウラが力なく膝をつく。
「ウラちゃん……っ!」
マリーが足を引きずりながら駆け寄り、ウラの背中に抱きついた。
「よかった……無事でよかったぁ……!」
「マリーさん……すみません……。ひどい怪我を……。なにより……トドメを刺せなかった……。それに、あいつは皆さんを……」
ウラの声は震えていたが、マリーは首を振って、その大きな手でウラの頭を包み込んだ。
「いいの。帰ろう、ウラちゃん。今日はもう何も考えない! お城に帰って、みんなでご飯を食べよう。……次は、一日に6食食べなきゃ元気出ないよ!」
「ふふ……それは多すぎますよ」
ウラは少しだけ、いつもの穏やかな表情を取り戻した。