World Chronicle / Battle Record 045

クロードVSパーピトス

クロードクロード・キヴァルシュ
VS
パーピトスパーピトス

鬱蒼とした木々が視界を遮る、 ヴァイスパとシルクスの国境地帯。 アームストン王国大公のクロード・ギヴァルシュと、 彼女が直々に選抜した精鋭の騎士たちが 同国アレクサンドラの依頼により進出していた。 だが、今の彼らは森の中で翻弄されていた。 「くそっ! どこだ! どこから来る…

Compiled Battle Record

導入と決着

戦闘記録 045

導入

鬱蒼とした木々が視界を遮る、
ヴァイスパとシルクスの国境地帯。
アームストン王国大公のクロード・ギヴァルシュと、
彼女が直々に選抜した精鋭の騎士たちが
同国アレクサンドラの依頼により進出していた。
だが、今の彼らは森の中で翻弄されていた。
「くそっ! どこだ! どこから来る!」
「上だ! 気をつけろ、何か降ってくるぞ!」
精鋭の一人が叫んだ瞬間、頭上の枝葉が揺れ、
バラバラと「雨」が降り注いだ。
「ぐああっ! か、体が動かない!」
「うわっ!汚ぇ!急いで装甲を外せ!」
アームストンの甲冑に不快な音を立てて液体が付着する。
ぺちゃ
ただの液体ではない。
触れた者の体力と魔力を奪い取る、強力な毒を含んだ体液だった。
混乱する兵隊たちを見下ろすように、
意地の悪い笑い声が森に響く。
木の枝の上に一人の羽が生えた女が立っている。
「あははは!ばーかばーか。君たち動きが鈍いよ~」
パーピトスは枝から枝へと飛び移りながら、
そして兵隊たちの上空を飛び移りながら、さらに唾を吐きかけた。
「ほらほら、こっちだよ! ぺっぺっぺっ」
「貴様・・・! よくも私の部下を!くらえ!」
リーダーの騎士が脇差を抜きとり、上空のパーピトスに向け投げつけた。
パーピトスはふわりと翼を羽ばたかせ、紙一重でそれを回避する。
「おっと!どこ狙ってんの!ばーかばーか!」
「くそがっ!」
「これでもくらえ!ぶぅ~~~!」
「汚ねぇ!ぐわぁ~~!」
パーピトスが霧吹きのようにして口から水滴を吹きかけると
リーダーは避けることができなかった。
「か・・・体が。」
「弱いね~かわいちょ」
リーダーはその場に手をついた。
「・・・くそ・・・体が」
・・・
すると林の中からゆっくりと修羅大公クロードが姿を現した。
それまで黙って戦況を眺めていたクロードが、ゆっくりと歩み出る。
「・・・あとは私がやる」
低く威圧的な声が響いた。
彼女の全身からは、強い闘気が立ち昇っていた。
「ク、クロード様! 危険です、こいつはただの魔物じゃありません!」
「だから私がやると言っている」
リーダーは己の非力さを引くいるようにその場で目を閉じて下を向いた。
クロードは動けなくなった部下たちを一瞥もしない。
その視線は、上空を舞うパーピトス一点に注がれていた。
その瞳は、獲物を見つけたハンターのようだ。
「おい、そこの。いい腕だ」
「ん? なに? 誰?ばーか」
「私はアームストン王国のクロードだ。」
「ふーん。私はパーピトス。パーピーってみんな言うよ」
「みんな・・・お前に似たようなのが居るのか?」
「なんだよ似たようなのって。そりゃいるでしょバーカ」
パーピトスは空中でホバリングしながら、首を傾げた。
クロードはその話を聞いた後、武者震いが止まらなくなった。
「アレクサンドラの依頼で仕方なく来たが・・・
なるほど、これは退屈しない玩具・・・遊園地だな。」
クロードが背中の大剣を抜き放った。
ズウォン、という重い音が周辺に響いた。
「へぇ・・・強そうだね」
パーピトスの表情から、ふとあどけなさが消えた。
本能が警鐘を鳴らしているのかもしれない。
この女は、今までからかってきた旅人や兵士とは違う。
「強いぞ私は。少なくとも、お前のその唾吐きに当たらないように戦うことなど簡単だ」
クロードは剣の切っ先をパーピトスに向け、獰猛に笑った。
「私の飢えを満たしてもらうぞ。
部下たちが受けた借りは、私の剣でたっぷりと返させてもらおう。」
自信満々のクロードの顔を見てパーピトスはイライラした。
「ふーん・・・生意気! パーピトス、生意気なヤツは嫌い!」
パーピトスが大きく翼を広げ、急降下の構えを取る。
クロードは大地を踏みしめ、迎撃の態勢を整える。
森の静寂を二人の気迫が打ち破った。

決着

パーピトスはクロード目掛けて急降下してきた。
「あんたもさっさと地べたに這いつくばれ!ぺっぺっぺ!」
パーピトスはクロードを目掛けて勢いよく唾を吐きかけた。
クロードは一瞬、剣で唾をはじこうとする素振りを見せたが、
瞬時に地面を大きく蹴りつけると同時に大きくその場から距離を取った。
「お?おい!よけるな!ばか!」
パーピトスは叫びながらほかの木の枝に飛び乗った。
クロードはその様子を冷静に見ている。
「臆病者!卑怯者!そんなに大げさに逃げて!
わたしが怖い?あはは」
パーピトスは嫌味を含んだ笑顔でクロードを挑発した。
「ばーかばーかざーこざーこかーすかーす!」
パーピトスの止まらない罵声をクロードは目を閉じて聞いている。
そしてクロードはゆっくりと声を出した。
「鎧」
「え?」
「さっき私の部下は鎧の上からお前の唾を受けた。
何故生体で触れたわけでもないのに力が抜けるのか?
考えられることがある」
「・・・何言ってんの?」
「その唾は唾ではないかもしれない。
魔術のような類かも知れないと」
「・・・な、何をいってんのよ・・・ば、ばかじゃないの」
「・・・わかりやすい反応だな」
クロードは残念そうな表情でパーピトスを見つめた。
「な、なんだよ!そんな目で見るな。ムカつく。
すぐ仕留めてやる!」
パーピトスが怒りの表情を浮かべたと同時に、
力を込めた彼女の指から鋭い爪がニョキニョキと生えてきた。
「ほう・・・モンスターらしくなってきたな」
「失礼だろ!八つ裂きにしてやる!」
パーピトスはもう一度木の枝を力強く蹴り上げ高く飛び上がった。
クロードはその様子見ると自分の腰を深く落とした。
パーピトスは枝から枝へと水平に蹴りつけながら
弾丸のように木々の間を移動し始めた。
クロードの四方八方をパーピトスが素早い動きで飛び回る。
「ここは私の得意な場所だからお前は負けるんだよ!ばーか」
パーピトスは木々の間を素早く移動している。
クロードは剣を両手で構えたまま目を閉じている。
「逝けぇ!」
パーピトスは木を蹴りつけ、鋭い爪をむき出しにしてクロードに襲い掛かった。
急接近
クロードは目を閉じて構えている。
「首元を掻っ切ってやる!」
・・・
・・・
「はあっ!!!!!」
クロードは瞬時に目を開き剣を横一線振りぬいた。
剣から出た衝撃波がパーピトス目掛けて飛び出した。
「えっ?」
衝撃波は間一髪パーピトスの頭上をすり抜けた。
「きゃああ!」
どてん
パーピトスはお尻から地面に落ちた。
「いたたたた・・・はっ!」
パーピトスは慌ててクロードに意識を戻した。
クロードは黙ったまま剣を構えている。
「グルルル・・・」
クロードを睨みつけたパーピトスから無意識の野生の声が漏れた。
「くそぉ!もう一度!」
パーピトスが再度木々を水平に蹴りつけながら飛び回る。
「くらえ!ぺっぺっ!」
「むんっ!」
クロードは剣を唾の方向に振ると、その剣の衝撃波は正確に極小の唾をとらえ霧散させる。
「・・・な・・・なんで」
「はあっ!」
クロードは再度剣を振りぬいた。
今度は衝撃波がパーピトスの体に直撃した。
「いやぁ!痛あい!」
どーん
再びパーピトスは地面に叩きつけられた。
「・・・な・・・なんでだよ・・・」
パーピトスは再び立ち上がるとクロードに意識をやった。
相変わらずクロードは目を閉じたまま剣を構えて立っているが
その全身にはオーラが漂っている。
「うう・・・なんだよコイツ・・・」
クロードは目を開いた。少し高揚している。
「さあもう一度だ・・・来い」
その笑い方にパーピトスはゾクッとした。
「・・・なんだよコイツ・・・やばいよ」
パーピトスが今までおもちゃにしてきた騎士とは違う。
「なんなんだよお前!なんだよその感じ!」
「私はクロードだ。アームストン王国の修羅大公だ」
「なんだよしゅらたいこうって」
「そんなことはどうでもいいからもう一度来い」
クロードのオーラが禍々しく漂っている。
パーピトスは野生の感が働いた。
「うう・・・」
「どうした来ないならこちらから行くぞ?
はっ!・・・はっ!・・・はっ!」
クロードが横一線に剣を振るうたびに
風を巻き込んだ衝撃が飛び出す。
パーピトスは慌てて逃げまわった。
風が来ているだけなのにヤバいと感覚的にわかる。
パーピトスは木々を飛び回って逃げるが
その風の塊が掠るだけでも強い衝撃が体に伝わる。
「はっ!・・・はっ!・・・はっ!」
クロードの振りまくる剣の衝撃波で
周りの細い枝が次々と折れて落ちていく。
パーピトスの表情が次第に焦りから恐怖へと変わっていった。
「くっ・・・やっ・・・痛っ・・・風で叩かれてるみたい・・・あっ・・・」
「ははは!どうしたどうした・・・もう一度その爪で私の首を狙ってこい!」
クロードの口調がますます高揚してきた。
「やばい・・・やばい・・・やばい・・・」
パーピトスは泣き顔になりながら大きく叫んだ。
「うわ~ん!上様~!!!」
という叫び声を残し、パーピトスはバサバサと翼を必要以上に羽ばたかせながら
一番高い木を上へ上へ登って行った。
「ん?逃がさんぞ!」
クロードはパーピトスを追いかけようと木を登ろうとしたその時、
「ん?まさか・・・残念だ。退却しなければならないようだ」
と冷静に言い放った。
クロードは自分の体が急激に重くなるのを感じたからだ。
パーピトスが木に登るにつれ
"体が重くなる何か”をまき散らしているのだろうと予測した。
「やはり唾ではなく魔術の類か?
・・・上様?何か組織的なものがあるのか?
とにかく一度戻るか」
パーピトスがその場から背中を向けて逃げるとあたり一面に静寂が戻った。