導入
ドラノマド帝国のアメリス・バドリは自分の領内にある
神殿に来ていた。
ドラノマド王国四聖統闘士として
王ザラ・ジャッバールに与えられた特訓場だ。
アメリスは部下たちに外に出るように促し
自分は特訓場で一人長い時間を過ごした。
「ふう。少し長居しすぎてしまったな・・・。」
アメリスは神殿の入り口に差し掛かると異変を感じた。
おかしい。
部下たちの反応がない。
「なんだ?・・・おい。私はもう帰るぞ・・」
誰もいない神殿のエントランスを抜けて外に出た。
扉を開け放つとアメリスの部下数人が入り口のところで倒れていた。
「はっはっはあぁ〜」
倒れている部下の後方からアメリスと同じ四聖統闘士のシャミル・アーセルが現れた。
悪魔のような笑みを浮かべている。
アメリスは瞬時に理解した。
奇襲だ。
「なんのようだ・・・」
アメリスは静かに問いかけた。
「あひゃひゃひゃあ・・・アメリス・・・
わかりきっているだろぉ
この間の続きをしよう・・・」
シャミルの隆々とした肉体が一段と盛り上がった。
ドラノマドの力王とも呼ばれる狂戦士。
アメリスは歯ぎしりしながら叫んだ。
「我が同胞たちに危害を加えるということは
ザラ様の兵隊に危害を加えたということ。
わかっているのか」
「はははぁ。安心しろよ。アメリス。全員死んでないさ。
ま、もう戦えないかもしれんがな。
さすが忠誠心が高いこと、私は頭悪いからわからないんだよなぁ。」
「貴様の行為は四聖統闘士としてあるまじき行為だ。許すわけにはいかない。」
その言葉を聞いてシャミルは舌を出して悪意に満ちた表情を見せた。
「・・・だったら私を裁いてみろよアメリス・・・」
「戦いに飢えたゲスめ・・・」
アメリスは大剣を握り返し地面に突き立てた。
「貴様を四聖統闘士とは認めない!
その卑劣で暴れるだけの狂気、ここで粛清してみせよう。」
シャミルは笑った。
「なあアメリスぅ。この前、グレゴリスに行ってきたんだ。
最高士官とかいう眼鏡の女をボコボコにしてやった。
そしたらザラ様に怒られた。
ドラノマドで一番になるまで出るなって。
だからアメリス・・・お前の首が欲しい。
あとクレオ、サフィーヤの首を集めてザラ様に持っていく。」
狂気
「話が通じる相手じゃないな。
かかってこい。砂漠に埋めてやる。」
「あひゃひゃひゃひゃ!おまえ、前から思ってた!その角!ならず者国家の人間!
ならず者国家にもいずれ殴りに行く。その予行練習!」
「クズが・・・」
アメリスとシャミルは間合いを詰めた。
決着
シャミルの拳がブンブンと振り回される。
アメリスは冷静に攻撃を見つめながら
間一髪ですべての攻撃を避けている。
「オラオラオラオラァ!アメリス!
逃げてばかりじゃ私には勝てないぞ!」
シャミルはしゃがみ込み下蹴りを繰り広げた。
アメリスは素早く飛び上がり距離をとる。
シャミルの蹴りからでた空圧で周囲の
砂漠の砂が大きく舞い上がる。
普通の人間の足の骨なら粉々だろう。
「・・・相変わらずのめちゃくちゃな体術・・・」
「ははは。なあアメリス。
お前の全身の骨をめちゃくちゃにさせてくれよ。」
◆ ◆ ◆
アメリスは二本の剣をクロスしながら
シャミルに突進した。
「ひゃは。お望み通り剣ごと潰してやる」
シャミルは剣の中心に目掛けて拳を突き立てた。
アメリスはクロス部分で拳を受けとめた。
アメリスの足は地面にヒビを刻みながらめり込んだ。
「ひゃあああはっ!そのまま埋まれや!」
シャミルの肉体はさらに膨張し、
力任せにアメリスを押し込めた。
「ぐっ・・・はああああああっ」
アメリスは必死に押し返そうとする。
「ひゃは。無理するなよアメリス。
力じゃお前に勝ち目はない。潰れろ!」
「くっ・・・」
アメリスは苦悶の表情を浮かべながら
片方の剣を外した。
一気に膝の長さ分だけ地面が抉れ、アメリスの体が下がる。
その瞬間アメリスは外した剣をシャミルの
腕の下に立てて差し込んだ。
シャミルは自らの押し込む力で
自分の腕にアメリスの剣を突き立てた。
「ぎゃあっ・・・てめぇ」
慌ててシャミルは剣の突き刺さった腕を持ち上げ
剣を抜く。
その瞬間。
アメリスはもう片方の剣を大きく振りかぶり、
渾身の一撃をシャミルの脇腹に打ち込んだ。
アメリスの剣がシャミルの筋肉を打ち付けた。
「があっ・・・」
「はああああああああああっ!」
アメリスは斬撃を水平に振りぬき
シャミルは吹き飛ばされ壁に突き飛ばされた。
「はあっ・・・はあっ・・・立ち上がるなよ・・・」
アメリスは少し息を切らし呟いた。
◆ ◆ ◆
しばらくするとガラガラと音をたて、
シャミルが立ち上がった。
シャミルは少し苛立ちながら
アメリスに向かって歩いていく。
「痛ぇな。アメリス。腹立ってきた。」
アメリスは少し落胆の表情を浮かべた。
「参ったな。・・・あまり効いてないのか?」
シャミルはアメリスに向けて加速して突進した。
「お返しさせてもらうぜ!」
シャミルの凶悪な拳がアメリスを襲う。
アメリスは剣でシャミルの拳を防いだ。
「動きが鈍ってるぞ!」
シャミルの蹴りをアメリスはもう片方の剣で防ぐ。
シャミルの足にアメリスの剣が刺さるが
シャミルは気にせず蹴り上げる。
「ぎゃあ!痛ってえな!ごぉら!」
アメリスは飛び上がる。
「そこだ!」
シャミルは空に目掛けて拳を振りぬく。
シャミルの大きな拳がアメリスの
鍛え抜かれた腹筋にめり込む。
アメリスは吹き飛ばされた。
「ごぼっ・・・が・・・はっ」
アメリスはその場に四つん這いに倒れて悶絶している。
「はっはぁあ・・・・いい感触だ」
シャミルは自分の拳をうっとりしながら見ている。
アメリスはその場にうずくまっている。
「腕と足に剣を突き立てられて、腹パン1発か。
今のところ互角か?なあ・・・アメリス」
アメリスは体制を整えゆっくりと立ち上がった。
「はあ・・・はあ・・・怪力バカめ」
アメリスは自分の腹をさすった。
◆ ◆ ◆
消耗戦がしばらく続いた後、
お互い満身創痍の状態になった。
シャミルは全身切り傷だらけ、
アメリスは打撃痕だらけ。
「アメリスぅ。もうそろそろ終わりにしようや。」
「お前が仕掛けてきたんだろうが。底なしのバカが」
「ひゃは。お前も楽しそうじゃないか」
「ふざけるな。」
「お前どう見ても野獣の恰好。戦いが嫌いなわけないだろ」
「私はお前みたいな狂人じゃない」
「どうでもいいや。次で終わりにしよう。」
シャミルは両手を前に突き出して構えた。
アメリスは剣を前で突きの体制に入った。
「おら!行くぞアメリス」
「・・・終わらす」
シャミルは突き出したまま砂を巻き上げ突進した。
アメリスは突き出した剣先をライフルの銃口の焦点を
合わせるかのようにシャミルに向けている。
シャミルは突き出した右手にオーラを纏い、
アメリス目掛けて高速で振り下ろした。
シャミルの拳がアメリスの髪の毛を激しく切断し、
顔に接触しそうなほど近い位置を通過した。
アメリスは辛うじてシャミルの拳を避けた。
そして、
アメリスは剣の切っ先をシャミルの心臓めがけて
全力で突き立てた。
「あっ・・・がっ・・・」
突きはシャミルの心臓付近に刺さった。
シャミルは口から血をこぼしながら
もう片方のオーラを纏った腕で
アメリスの左胸下を殴り上げた。
「があっ・・・」
シャミルは胸に剣を突き立てられ、その場に倒れた。
アメリスは殴り飛ばされ、
大きく離れた場所まで吹き飛ばされた。
シャミルは大の字であおむけに倒れている。
アメリスはがれきの下に入っている。
しばらくの間、その場所に静寂が流れた。
日が暮れると同時に、
ドラノマド軍と思われる軍隊が
二人の体を確保した。