導入
軍国アストマの進撃隊バーラ・リンドフスキー一行が北部に向けて進軍していた。
(バーラ様!ジャンナ率いる殲滅隊の領地に入りました)
「おかしいね。ジャンナの部下がいないなんて・・・。何かあったのかな」
(噂によると何者かがジャンナ領に進行し、ジャンナを負傷させたとの情報が入っています)
「誰だろう・・・。サリスか、アデレイドか。隊長クラスじゃないと
ジャンナを倒すことは出来ないと思うけど」
バーラ一行は砂漠上を北上していった。
ジャンナ殲滅隊とサリス破壊隊の領地線を越えようとしたとき、
赤い大きな鳥のようなシルエットが上空を横切った。
「!なんだ?」
バーラ一行はその姿を確認すると警戒を高めて臨戦態勢に入った。
大きな鳥のようなシルエットは人だとわかり、
バーラ達の前に立ちふさがった。
その人物の後ろから同じ所属と思われる小隊が近づいてくる。
「お前たち。軍国アストマのものか?」
ツンツンに立てた赤髪の女はバーラに問うた。
バーラは訝しげな表情を浮かべて質問に答えた。
「そうだ・・・。私は軍国アストマの進撃隊隊長バーラ・リンドフスキーだ。」
ツンツン赤髪女は腕組みをしたまま答えた。
「そうか。私はガルガンティスの十将軍の一人、キルスティだ。」
「ガルガンティス?なんでこんなところに?」
「まあ色々あってな。うちのバカ皇女が行方不明でな。
アストマで失踪しているという情報があるからな。知らないか?」
「・・・私たちは普段はアストマの南部から中部で活動している。
ガルガンティスの情報などほとんど知らない。
もちろん皇女の事も知らない・・・。」
「そうか・・・。」
しばらく沈黙が続いた後、バーラは探るように口を開いた。
「・・・殲滅隊を攻撃したのは・・・君か?」
「ん?殲滅隊?なんだそれは。私は入国したばかりだぞ」
「殲滅隊という別の部隊が何者かに侵攻されたんだ。」
「ん・・・ああ、もしかしたらガルガンティスのほかの将軍かもしれないな。
同じ理由で動いている奴がいる。」
「そうか・・・ならばいいんだ。」
「おい、お前は強そうだな。この国の幹部か?」
「・・・いや私はただの一介の戦士さ・・・。もういいか?私たちはさらに北を目指す。」
バーラは早く切り上げたい、とばかりにこの場をやり過ごそうとした。
そんな様子を見てキーディスは得物を見るように目を細めてバーラを見据えた。
「・・・私はバカアリスなんて実のところどうでもいいんだ。
強い騎士と戦いたいだけだ。そうだな・・・例えばお前とか・・・」
キーディスは刀を抜くとバーラに対して殺気を放った。
「!・・・私は無益な戦いはしたくないんだ。」
「無益かどうかは戦ってみなければわからんさ」
バーラは不本意な表情を浮かべて刀を構えた。
「・・・やるしかないのかっ!」
「嫌だったら力で証明してみな!行くぞ!」
キルスティは低頭体制から弾丸のようにバーラ目がけて襲い掛かった。
「くっ!」
決着
キルスティの鋭く激しい斬撃にバーラは苦戦していた。
「くっ・・・なんて攻撃だ・・・」
「おいおいどうした?その程度か?」
「うあっ・・・」
バーラは剣をはじかれたと同時にキルスティから距離を取り、
はじかれた剣を急いで回収した。
「はぁ・・・はぁ・・・」
息を切らすバーラを見てキルスティは首を傾げた。
「んん?・・・私の勘だとお前はもっとできる奴だと思ったがな」
バーラはキルスティを鋭く睨んだ。
キルスティは顎をさすりながらバーラに問うた。
「お前・・・やる気あるのか?自分の国が侵略されているんだぞ」
バーラはその問いを意外に感じたのか驚いた顔をした。
「・・・こんな国のために真剣にはなれないさ・・・」
キルスティはその答えに目を丸くした。
「お前自分の国が嫌いなのか?」
バーラは顔を背けながら言った。
「見ればわかるだろう・・・。誰も彼もが好き勝手暴れて・・・
まともな政府もなく・・・強い奴が弱い奴を嬲る・・・
そんな国さ・・・なぜ好きになれる・・・」
キルスティ「・・・わからんな。騎士としての立場があるだろうに」
バーラ「・・・」
キルスティ「ふん。まあいい。とりあえず決着だけはつけさせてもらうぞ」
キルスティは大きく体を広げバーラに飛び掛かった。
◆ ◆ ◆
バーラはキルスティに反撃を繰り出すも
キルスティの無数の攻撃を受け体中の至る所を負傷していた。
「はぁ・・・はぁ・・・ぐっ・・・」
(バーラ様っ!・・・)
バーラの部下たちが少し離れたところから心配そうに見ている。
キルスティもバーラの攻撃を少しは被弾しているが
明らかに物足りなそうな顔をしてバーラを睨んでいる。
「なかなかいい動きだが・・・覇気がないな。
こんな状態で勝っても私は満足できない・・・」
キルスティは膝をつくバーラをちらりと見た後、
離れた場所にいるバーラの小隊を見据えた。
「本当はこんなことはしたくはないんだが・・・
隊長が不甲斐ないから・・・しょうがないな!」
キルスティはバーラの小隊めがけて槍のように身を屈めて突進した。
「な!何をするんだ!!!」
バーラは部下に迫るキルスティに向けて叫んだ。
(うわあああ!バーラ隊長!)
バーラの小隊たちはへっぴり腰の状態で武器を構えている。
「恨むなら不甲斐ない隊長を恨め!」
キルスティはバーラの部下めがけて刀を振り下ろした。
ガキン、と鈍い音がした。
間一髪バーラがキルスティの刀を受け止めた。
部下の目先数センチでキルスティの刃が鈍く輝いている。
(ひぃぃ。バーラ隊長・・・)
「へぇ!今の一瞬でここまで動いたか!やるじゃないか!
バーラ!私は今から貴様の部下を狙って攻撃するぞ!
嫌なら止めてみろ!」
「キルスティ!貴様ぁ!」
目つきが鋭くなったバーラは全身にオーラを纏った。
バーラとキルスティは目にも見えない斬撃の応酬を繰り広げた。
◆ ◆ ◆
「はぁ・・・はぁ・・・」
バーラはその場に剣を突き刺しもたれかかった。
倒れそうになるのを必死にこらえている。
「はぁ、はぁ・・・」
キルスティはバーラを鋭く睨みつけた。
「貴様はそれだけの実力がありながら最初に手を抜いた。
・・・騎士失格だ。
自分の仲間に危機が及んでから全力を出しても遅い」
バーラは悔やんだように目を瞑り唇をかんだ。
「この戦いは私の勝ちだ・・・
だが・・・お前の命は貸しにしておく。」
バーラは驚いた表情でキルスティを見つめた。
「なぜ・・・」
キルスティは背中を向けた。
「貴様は国のためではなく私ともう一度戦うために生かされている。
次戦うときはくだらない雑念無く剣を振れるようにしておけ」
バーラはその場で呆然と座り込んだ。