導入
ガルガンティスとスペルニアの国境沿い
一人の魔術師が魔法陣の上で水晶を眺めていた。
(もうそろそろ来てしまうわね・・・)
魔術師は魔法陣の上に立ち、誰かを待った。
何の変哲もない小山の一角の前で青髪の女が言った。
「ここがそうだ」
もう一人の鋼色の女が言い放った。
「よし行くぞ。はあああああああっ」
鋼色に身を包んだ女がオーラを込めて
剣を強く振り回し大きな竜巻を起こした。
するとまるで布がはぎ落されるかのように
あたりの一面の景色がめくれ、
その先には大きな魔法陣とその上に立つ女が現れた。
「あらあらあら野蛮なお客様だこと」
魔法陣の上に立つ女はあきれたように言った。
「お前が結界師か?」
青髪の女は問うた。鋼色の女は睨んでいる。
「そうね。初めまして。視認できないように結界幕を張っていたのに。
よそのお家のカーテンを剝ぎ取って無理やり覗くのはちょっと不躾じゃない?」
結界師の女は不満げに口を尖らせた。
その言葉をなだめる様に青髪の女は返答した。
「我々は別に侵略しようとしているわけじゃない。
お前の国を知り、そして国交を始められるかどうかを確認したい」
結界師の女は不満そうに言った。
「結界を張っている時点でわかるでしょ~。
私たちの国は他国と付き合いたくないの。
帰ってもらえるかしら」
青髪の女は無表情で淡々と言い返した。
「残念ながらお前ひとりの意見では帰るわけにはいかない。
私たちは国を背負って来ている」
「あらそう?じゃあ力づくで帰ってもらおうかしら!」
結界師の女は目を光らせ手の平から光る球のようなものを取りだした。
その光る玉は板状に姿を変え、結界に変わった。
その結界は結界師の前に現れ、両端を確認できないほどの大きな結界となった。
その結界はスペルニア側からガルガンティス側へと少しずつ進み始めた。
「こ!これは!アリアネ!」
「わかってるメルセデス!」
アリアネは肉体が膨れ上がり戦闘態勢に入り空へ飛びあがった。
メルセデスは腰を低く落とし結界に向かって突っ込んだ。
「あははは!無駄よ!私の結界は力では破壊することは出来ないわ!」
アリアネは不敵な笑みを浮かべてメルセデスに投げかけた。
「だ、そうだ。メルセデス。どうする?」
メルセデスは同じような不敵な笑みを浮かべて返答した。
「そうだな。我々が力だけではないことを見せつけてやろうじゃないか」
決着
「さあ、通用するかどうか!試させてもらおうか!」
アリアネはフルパワーで結界師の結界向けて飛び込んだ。
アリアネは自信をみなぎらせて結界を破壊しようと試みた。
その様子を結界師は怪しげな笑みを浮かべてみていた。
その表情を読み取ったメルセデスは声を上げた。
「待て!アリアネ!早まるな!」
メルセデスの制止も虚しくアリアネは結界に突っ込んだ。
アリアネから放たれるオーラが結界に飲み込まれた。
そして結界はアリアネのオーラを散弾状に跳ね返した。
アリアネは至近距離でカウンター弾を全身に浴びた。
「ぐああああああっ!」
アリアネはその場に仰向けで倒れこんだ。
「アリアネ!」
メルセデスはアリアネに駆け寄った。
メルセデスが結界師を睨むと結界師は意地悪く笑った。
「あっははは。バカの一つ覚えね。力で私の結界を破ることは出来ないわよ。
私の結界はゴムの性質を持っているのよ。
結界に向かってくるエネルギーをそのまま跳ね返すわ。
そのアリアネさんのパワーが強大であればあるほど
跳ね返す私の結界も強力になるの」
アリアネがボロボロになりながらむくりと起き上がった。
「アリアネ!大丈夫か!」
アリアネはニヤリと笑い再度突進のポーズをとった。
「さあ・・・持久戦と行こうか・・・」
その様子を見て結界師は怪訝そうな顔をした。
「本当のバカね・・・思い知るがいいわ」
メルセデスも結界に向けて構えた。
「アリアネ、私もサポートするぞ」
◆ ◆ ◆
アリアネは何度も何度も
目の前に立ちはだかる結界に攻撃を仕掛けた。
結界は攻撃を通さず、同じ力で反撃をしてくる。
アリアネは自分の出した強力な攻撃が跳ね返され、
それを自分で避ける、という行為を何度も続けていた。
「はぁ、はぁ・・・まだやるの?バカじゃないの?」
メルセデスは結界師の表情に疲れが出てきていることに気づいた。
結界師は髪を覆っていたフードを投げ捨てた。
銀髪の女性が姿を現した。その表情には疲労が見えた。
その時だった。
再度、攻撃を仕掛けたアリアネが跳ね返された自分の攻撃に被弾し、
ダメージを受けその場に倒れた。
「アリアネ!」
メルセデスはアリアネのそばに近づき様子をうかがった。
「はぁ・・・はぁ・・・もういい加減諦めなさいよ。
その人ボロボロよ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
アリアネは無言で剣を突き立て寄りかかりながら立ち上がった。
結界師を鋭く見据えた。
「はぁ・・・はぁ・・・」
結界師はアリアネの眼差しを見て少し委縮した。
「まだやるの・・・はぁ・・・はぁ・・・勘弁してよ・・・」
アリアネは再度結界に向けて走り出した。
◆ ◆ ◆
メルセデスはたまらず叫んだ。
「もういい!アリアネ!一度退却し、作戦を練り直すんだ!」
アリアネは無心に結界に挑んでいくが、声が届いていない。
「・・・」
結界師はその場にしゃがみこんで疲れ果てている。
「はぁーーっ。はぁーーっ。・・・はあっ、はあっ・・・結界の維持が・・・
想像以上にこいつの攻撃を跳ね返すのが・・・しんどい・・・」
アリアネはぼそっと独り言をつぶやいた。
「もう少し・・・」
アリアネは朦朧とした視線の位置を合わせ、大きく体を動かし結界に剣を突き立てた。
ピシッ
突き立てたアリアネの剣は結界に大きなヒビを入れ、結界は真っ二つに割れた。
「はぁっ・・・はぁっ・・・」
アリアネはその場に崩れるように倒れた。
「アリアネっ!」
メルセデスが駆け付けるとアリアネは眠るように穏やかに気絶していた。
「アリアネ・・・」
メルセデスはアリアネを抱きかかえた。
「わ、わたしの結界が・・・はあっ・・・はあっ・・・。
で、でもまだ結界は出せるわよ・・・はあっ・・・はあっ・・・」
メルセデスはアリアネを抱えながら言った。
「スペルニアの結界師・・・。その必要はない・・・。
・・・その結界が強力なことは痛いほどわかった。
しかし次来るときは私たちも今のままではない。
確かにアリアネはお前の結界を破壊したんだ。
・・・私たちは今回は負けを認めて一度引き返す。
もう一度言っておく。私たちは侵略をしに来たわけじゃない。
お互いのために国交を始めたいだけだ・・・」
メルセデスはアリアネを肩によりかけ背を向けガルガンティスへと歩き始めた。
その場に残された結界師は地面にばたりと倒れこんだ。
「はぁ・・・はぁ・・・危なかったかも。
これは・・・ほかの九魔界に報告しないと・・・
私の結界が破壊された・・・
ここ何十年もなかったことだわ・・・」