導入
<エピソード>
聖騎士ザイラと小数部隊はセントロマノの東方に位置する
ミストヴェール公国の小さな国境村ウェストゲートに来ていた。
ウェストゲートは岩山に囲まれた山岳地帯であり、
国境を管理する関所が一つあるだけだった。
ザイラ「さて・・・開戦の幕開けだ・・・。
悪く思うなよ・・・。」
ザイラが右手を上げるとその合図で関所になだれ込む小数部隊。
ザイラはその様子を腕を組みながら見ていた・・・。
しかしその時・・・
関所に押し返されるように部下たちが放り出された。
ザイラ「・・・何かいるな・・・。」
しばらくすると
長身のポニーテールの軍服を着た女が
一人で関所から出てきた。
「はいはいはい。ここはもうミストヴェールですよ。
自分たちの国に戻りましょう。通商目的ではないですよねぇ?
物騒な得物は持ち込み禁止ですよぉ。」
ジーナが大きく刀を振って見せると尻もちをついていた小数部隊たちは
へっぴり腰のままジーナに背中を向けて逃亡した。
ザイラはその様子を見て呆れた顔をしてみせた。
ザイラ「・・・お前がオルフェリアの話していた色輪の騎士か?」
ジーナ「ありゃ、私も有名になったもんだね。
初めまして緑の将軍ジーナ・グリーンフィールドと申します。」
ザイラ「私はセントロマノの聖騎士ザイラだ・・・。
・・・お前・・・強いな・・・。」
ジーナ「・・・私・・・強いよ・・・。(モノマネ)」
ザイラ「私は強い戦士と戦うのが楽しみでな・・・。
お前には私の相手をしてもらうか・・・。」
ザイラの筋肉が膨れ上がった。空気が張り詰めるのがわかる。
ザイラが刀を振ると風が揺れ、砂埃が大きく巻き上がった。
ジーナ「!・・・君・・・、ヤバいね・・・。
私も体がピリピリしてくるよ・・・。
久しぶりに本気でやらなきゃヤバそう・・・。」
ザイラ「ふふふ遠慮するなよ・・・。
戦場での遠慮は"死"を意味するぞ。
まあこの戦いで数えきれないほどの"死"が見れるかもしれないが。」
ジーナ「そーゆー冗談は私は嫌いでね!
君をここで押さえれば戦いはなかったことになる。
負けるわけにはいかない!」
ザイラ「来い。お前の力を見せてみろ・・・。」
決着
二人がお互いに剣を抜いてから死闘が始まりすでに数時間が経過した。
ザイラ
(はぁ・・・。この女・・・想定以上だ・・・。
正直なところ色輪騎士団がどれだけ強いと言っても戦いだけに身を置いて生きてきた私に勝てるわけない、
そう思っていた。・・・しかしどこまでも喰らいついてくる。
ならば!私の全力を持って叩き潰すのみ!)
ザイラの目が赤く光り、筋肉が今まで以上に膨れ上がった。
目の前の空気が収縮しジーナの動きに一瞬の迷いが生じた。
ジーナ「な・・・」
修羅の如く赤い光を放つザイラは後ろに大きく振りかぶり、前かがみになると同時に二刀流の剛剣から紅に光る衝撃波を繰り出した。
ジーナは危機を感じ回避を試みた。
最初の一発を回避したが、二発目は避けられなかった。
ジーナは胴体に強い衝撃を受けた。
腹筋を裂かれるような痛みを感じたと同時にそのまま岩山に叩きつけられた。
ジーナ「がはあぁぁぁぁっ・・・。」
巨大な岩山の壁面に大きな亀裂が入るほどの大きな衝撃だった。
ジーナは地面に仰向けに倒れると意識が薄らいだ。
ザイラが見下ろしている。
ザイラ「はあ・・・はあ・・・
私をここまで苦しめたのはお前が初めてだ・・・。
私の騎士道において・・・
お前を痛めつけるようなつもりはない・・・。
苦しまずに・・・止めを刺してやる・・・。」
ジーナはすべてを悟ったように目を閉じた・・・。
その目には薄っすらと光るものがある。
ザイラ「さらばだ・・・好敵手よ・・・。」
ザイラが剛剣を構えた時、後ろから腕を掴まれた。
「待て」
ザイラは腕を払おうとしたがその力の強さを感じた。
ザイラは後ずさって声の主を確認した。
何者だ・・・気配がなかった。
そこには全身橙色の姿をした巨躯の騎士が立っていた。
ザイラ「貴様は・・・。」
橙色の騎士「まだそいつを死なせるわけにはいかない・・・。」
ザイラ「ふざけるな。これは私とこの女の勝負だ。邪魔をするな・・・。」
橙色の騎士「そいつにはまだ成すべきことがある・・・。
卑怯だと言われようと騎士道に反しようと
そいつの命を取ろうというならば、私が相手になろう・・・。」
ザイラ「・・・。」
ザイラは悟った。この女も色輪の騎士なのだろうと。
そしてここで戦えばさすがに勝つことはできない、と。
長時間にわたるジーナとの戦いでザイラは想像以上に消耗していた。
ザイラはゆっくりと歩き始めた。
橙色の騎士の横を通り過ぎると同時に言葉を放った。
ザイラ「緑の将軍ジーナ・グリーンフィールドに言っておけ。
次に会う時はこんなものでは済まさない・・・。
完膚なきまでに貴様の騎士道を叩き潰す・・・。
それが嫌なら・・・強くなることだな・・・。」
橙色の騎士「必ず伝えておこう・・・。」
ザイラ「貴様も・・・次に会う時は容赦しない。
騎士の果し合いに泥を塗ったこと・・・後悔させてやる。」
そういってザイラは夜の帳の向こうに消えていった。