World Chronicle / Battle Record 053

タマーラ ft.モデスタ VS メリザンド

タマーラ&モデスタタマーラ・ランバート
VS
メリザンドメリザンド・アンベール

オリハルトとコーネリアの国境に跨がる山岳地帯。 そこに、メリザンド率いる少数精鋭部隊が侵攻していた。 メリザンドは事前にオリハルトのメイ・マゴーナグル総司令官へ通告を行い、 自ら国境を越えて山岳地帯の捜索を試みていた。 「タマーラ……必ず……捕らえる」 メリザンドから放たれ…

Compiled Battle Record

導入と決着

戦闘記録 053

導入

オリハルトとコーネリアの国境に跨がる山岳地帯。
そこに、メリザンド率いる少数精鋭部隊が侵攻していた。
メリザンドは事前にオリハルトのメイ・マゴーナグル総司令官へ通告を行い、
自ら国境を越えて山岳地帯の捜索を試みていた。

「タマーラ……必ず……捕らえる」
メリザンドから放たれる鬼気迫る圧に、隊員たちの意識も高まっていく。

「総司令! どうやらこの辺りのようです。
数日前、近くの集落が『緑の騎士』に襲撃されたという情報を、
生き残った村人から得ました。
話の辻褄からして、元将軍タマーラ・ランバートで間違いありません」

メリザンドはその報告を聞くと、
鬱蒼とした木々の合間から覗く空を見上げた。

「愚かな……一度は将軍まで上り詰めた者が、コソ泥に堕ちるとは。
しかし……見習いのタマーラに剣術の基礎を教えたのは私だ。これも因果か。……終わらせねばな」
「司令、補足ですが……どうやら一人による襲撃ではなかったようです」
「何?」
「詳しい情報は得られませんでしたが、複数人による襲撃だったとのことです」
「……誰だ? タマーラの性格を考えると、命を握る手下と共に犯行に及んだか。
どちらにしろ……止めなければ。先を急ぐぞ」
「はっ!」

霧が深く立ち込める、深淵なる樹海の奥。
タマーラは酒をあおりながら、村から奪った物資を確認していた。
「ふん……オリハルトの貧乏集落め。大したものがない……」
タマーラは骨付き肉をしゃぶり、
頬についた乾いた返り血を爪で剥ぎ取りながら毒づく。
……数分が経過した。
タマーラはふと違和感を覚えた。
深い深い針葉樹の奥底で、気性の荒い鳥たちが一斉に鳴き声を上げて霧散していく。
「なんだ?」
タマーラは耳を研ぎ澄ませた。
……ザッ、ザッ、ザッ。
複数の足音。
タマーラは悪意たっぷりに笑った。
「くふふ。このタマーラ様がいると知らずに〇されに来たか。
良いだろう……貧乏集落では物足りないからな。全員〇して家畜の餌にしてやる。
まあ、あいつが戻ってきていないが、楽しみは私のものだ。はは」
タマーラは酒瓶を飲み干すと、勢いよく地を蹴り、足音のする方へと飛び出した。
幾本もの針葉樹の間を駆け抜ける。

「はっはぁ〜、羊どもぉ!」
小さな広場に飛び出すと同時に、タマーラは叫んだ。
「た、タマーラだ! 警戒!」
コーネリアの小隊が一斉にタマーラへ剣を向ける。
「お?コーネリアの雑魚どもか?久しぶりに見た国章だなぁ〜。へへへ。血に染めてやろう」
コーネリアの部隊は、ゆっくりと剣を下ろすと左右に展開した。
「あん? なんだぁ?」

……ザッ、ザッ、ザッ。
大きく、太い足音が響く。
……タマーラの顔色が悪くなった。
「ま……まさか……」
タマーラの顔面が脂汗で満たされる。
「まさか、ここまで追ってくるのか」
あたり一面に濃霧が立ち込める中、
白いキャンバスのような霧の中から巨大な肉体が姿を現した。

「タマーラ……元気そうだな、貴様」
タマーラの目の前に、コーネリア国軍事総司令、メリザンド・アンベールが仁王立ちしていた。
「め……メリザンド……」
タマーラは狼狽の表情を浮かべる。

「何をしに私が来たか、分かっているな?
私は貴様のせいで、どれだけ顔を洗っても泥が落ちない気分だ。
コーネリア王、オリハルト王女、メル司令……メル司令が用意したオリハルトの精鋭部隊、
そして他のコーネリア将軍たち。貴様を野放しにしたせいで、
私は〇んでも〇にきれない。せめてお前を〇してからにしようと思ってな」
タマーラの汗が止まらない。
「ただ……お前を生きたままコーネリア王の前に突き出すのが最善だと思っている。
このまま連行されてくれれば、今日は惨いことはしない……どうする? 好きにしろ」
メリザンドの体中からオーラが滾っている。
その圧倒的な気迫の前では、周囲の生き物全てが膝を屈したくなるほどだった。

……タマーラは目を充血させて言い放った。
「ははは……想像するだけで愉快だな、メリザンド……」
ピキリ。
メリザンドの眉間に青筋が浮かぶ。
「お前はいつもコーネリア王にいびられていたな!
コーネリア最強の戦力と言われたあんたも、結局あのおいぼれの傀儡に過ぎない!
惨め! 無様! ただの肉塊! 私は自由! お前とは違うのよ!
このタマーラ・ランバートは、あんな国に収まる人間ではない!」

メリザンドは無表情のまま言い放つ。
「それが遺言でいいのか?」
タマーラは一瞬ビクッとしたが、すぐに言い返した。
「あんたの遺言は、コーネリアのおいぼれに送り返してやるよ」
「お前がここまで愚かだとは思わなかったぞ、タマーラ。
実力の差も分からないとは……もういい。生きたまま連れて帰るのは無理そうだな」

……その時だった。
「むっ」
ザシュッ!

メリザンドは素早く上半身をそらした。
自身の肩を見た。
切られている。血が滲んでいた。
タマーラは落ち着きを取り戻したように笑う。
「遅いぞ、モデスタ」
影のように、タマーラの横にモデスタが現れた。
「誰だ貴様は」
「まったく、なんて堅い体なのよアイツ。ねえタマーラ、あのゴリラが前に言ってた奴?」
「ああ……どうしようもないゴリラだ」
ピキリ。
メリザンドの眉間に三本目の血管が浮かんだ。
「貴様か。タマーラと共に集落を襲っているのは」
「うふ。モデスタよ。よろしく」
「メル司令に聞いている。オリハルトの敵だと」
「あらぁ。彼女に覚えてもらっているなんて光栄ね。いずれ首を取るわ」
「ははは」
「うふふ」

メリザンドは目をつぶった。
「はあっ!」
ギュルルッ。
その瞬間、メリザンドの肩の肉が盛り上がり流れていた血が瞬時に止まった。
タマーラもモデスタも息を呑む。
「救いようのない二人だ。二人とも、この場所で逝け」
「だとよ、モデスタ」
「うふふ、みたいね。良いじゃない、お言葉に甘えて……二人でヤるわよ」

メリザンドが闘気を爆発させた。
タマーラとモデスタは、メリザンドを取り囲んだ。

決着

メリザンドの全身から凶暴なオーラが吹き荒れる。
「ふん。化け物め」
タマーラが吐き捨てると、
メリザンドは怒りに満ちた視線で空気を圧した。
「心配するな……すぐに終わらせてやる」
メリザンドは腰を落とし、大剣を横一線に振り抜く。
放たれた紫の衝撃波がタマーラとモデスタを襲った。

「くっ、マズい!」
タマーラは後方に跳んで回避する。
しかし、衝撃波は着弾直前に浮上し、執拗に彼女を追尾した。
「なっ、なんだと!?」
咄嗟に剣で受け止めるが、その重圧に呻きが漏れる。
「くっ……なんて重さだ……!」
「逝け」
メリザンドが瞬時に肉薄し、大剣を振り上げた。
「しまっ——!」
ガキンッ!
メリザンドの剛剣を受け止めたのはモデスタだった。
衝撃で足元の地面に亀裂が走る。
「はっ、お、重ぉい……わねぇ!」
モデスタが強引に剣を跳ね上げると、
タマーラも衝撃波を弾き飛ばし、その勢いでメリザンドの脇腹を切り裂いた。

ザシュッ!
「ぐっ!」
二人は即座に距離を取る。
メリザンドは滲む血を指でなぞり、無表情に傷口を見つめた。
「……化け物め。硬すぎるだろ」
タマーラが舌打ちすると、モデスタが毒づく。
「鋼の肉体なんて比喩だと思ってたけど、あなたの元上司、本当に鉱物なのね」

メリザンドは二人を冷徹に見据えた。
「無防備な私を打ってこの程度か。私を倒すことなど到底不可能だ」
「うふふ、どうかしらね。タマーラ?」
「ああ、無理かどうか、試させてもらおうか」

激突。
だが、タマーラは防戦一方に追い込まれる。
「その程度の力で、私の剣は受けられん」
「くっ……!」
「剣など無くとも、貴様を仕留めるのは他愛もない」
メリザンドの豪蹴がタマーラの腕を直撃した。
ゴアッ
「があっ!」
悶絶し、地面に転がるタマーラ。
メリザンドがトドメを刺そうと踏み込んだ瞬間、死角から声が響いた。
「私を忘れないで」
首元を狙ったモデスタの斬撃を、メリザンドは前腕で防ぐ。
「お前程度の刃では、私の腕は落とせない」
「ちっ」
「隙が多い」
ズガッ!
「が・・・があっ・・・」
強烈なメリザンドの肘鉄がモデスタの横腹に突き刺さり
そのままモデスタは吹き飛ばされた。
「この程度か・・・」

圧倒的なオーラを纏うメリザンドが仁王立ちをしている。
地面に這いつくばる二人を見下ろし、メリザンドは失望を露わにする。
「二人がかりでこの体たらくだ。私の敵ではない・・・。
貴様らの軽い攻撃では私の芯までダメージを与えることなどできない」
タマーラはよろよろと立ち上がり、不敵に笑った。
「ふっ……ふふふ。今のうちに勝ち誇っておけ。最後に勝つのは、私たちだ」
いつの間にか立ち上がっていたモデスタも、うっとりと目を細める。
「楽しいわぁ。ねぇタマーラ。
私たち・・・敵の大将に挑む勇者みたいじゃない・・・」
モデスタはうっとりとした表情を浮かべた。
メリザンドは無表情のまま言葉を継いだ。
「実につまらん・・・」

圧倒的な武力を前に、二人は防戦一方だった。
強力な打撃が、着実に彼女たちの体力を削っていく。
「はぁ……はぁ……」
「ふぅ……ふぅ……」
「満身創痍だな。素直に捕まるなら、命までは取らん」
その言葉に、タマーラが嘲笑を返した。
「……どこまでも愚かだな、メリザンドォ!」
メリザンドの眉間に青筋が浮かぶ。
「もう覚悟は決まってるのさ。
あのおいぼれの傀儡には理解できないだろうがな!」
「……やはり、ここで息の根を止める」
追い打ちをかけるように、モデスタが笑った。
「あはは!無様ね!それほどの力がありながら、
自由に生きられない箱庭のゴリラ!」
「コーネリアと王への侮辱……貴様らは決して許さん」
メリザンドのオーラが爆発的に膨れ上がった。
「一瞬で終わらせてやる! 逝け」
紫の炎と化したメリザンドが突撃する。

——刹那。
プツン、と何かが切れた。

「な……なんだ……?」
膝を突くメリザンド。
燃え盛っていたオーラが急速に萎んでいく。
「な……何が……」
四つん這いになり、荒い呼吸を繰り返す。
その周囲を、二人が悠然と囲んだ。
「はぁ、はぁ……びっくり。まさかこんなに時間がかかるなんて」
「ふぅ・・・危なかったな。あと少し遅ければ、やられていた」
見下ろす二人の瞳には、明確な悪意が宿っていた。
「信じられる? 普通の人間なら即死よ」
「最初の一撃、モデスタの不意打ちがなければ危なかった」
「肩を突き刺した時、一番深く流し込めたものね」

朦朧とする意識の中、メリザンドは必死に二人を睨む。
「き、貴様ら……何を……」
「メリザンド。お前に並の物理攻撃が効かないことなんて百も承知だ。
だから山に籠もって対策を練ったのさ」
タマーラが冷酷に笑う。
「武器にはこれでもかと神経毒を塗り込んである。
3メートルのグリズリーを一瞬で気絶させる毒をな」
「その精神力には驚くわ・・・ようやく回ってきたようね」

タマーラはメリザンドの顎を強引に持ち上げた。
「ははははは!総司令!立場が逆転したな?んん~?
・・・私の慈悲を与えてやる。すぐには〇さないからな?私は優しいからな~」
「タ……マァ……ラ……」
今にも殺気が飛び出しそうな視線を受けてタマーラはたじろいだ。
「ふ、ふん・・・死にぞこないめ。モデスタ」
意識朦朧の中でも殺意の視線を向けるメリザンドに対し、
モデスタがその頭を掴んだ。
「はぁい、改めまして。モデスタよ。今からあなたを”書き換えて”あげる……うふふ」
吐息がかかる距離まで顔を寄せ、モデスタの瞳が妖しく光る。
「私は催眠が得意なの。強い強い総司令さん、
あなたはこれから、弱い弱い奴隷になるのよ……」
「き…さま…あ……」
モデスタの妖しい瞳の光が強くなるにつれ
メリザンドの瞳から、光が消えていく。
大きく見開かれた眼球、開いた口からは涎が垂れる。
「ああ…あ……あああっ」
モデスタはメリザンドの耳の後ろのあたりに指を押し込み力を入れながら氷のような言葉で言い放った。
「堕ちなさい」
「あああああああ……」
「はーーーーはっはっはっはぁ!最高の気分だな!んん~?」
タマーラは両手を広げて悪魔のように大きく笑い声をあげた。
メリザンドの記憶の中、永遠に続くかと思われたタマーラの笑い声が次第に小さくなっていった。